『梟の城』

小説は娯楽だ。

 
久しぶりに読む小説ということもあるが、
司馬遼太郎の直木賞作品なのだから、
面白いのは当たり前かもしれない。
だが、やはり、
わくわくとする感覚は、
小説は娯楽だ、と改めて思わせる。
 
 
一つには、
忍者を主人公に据えていること。
漫画やアニメの印象が強いのか、
忍者というと幼稚なイメージがまず来てしまうが、
さにあらず。
司馬遼太郎の歴史考証に支えられた、
生々しい乱波たちの躍動感。
挿絵や地図がほしいと、
ふと思ってしまうが、
実際あれば興ざめするだけだろう。
そう思わせるほど細かな、
それでいてくどくない、
絶妙な描写となっている。
 
二つには、
商人の存在。
『大阪侍』はとくにそうだが、
戦は武士だけが動かすのではない、
ということをこの小説家は教えてくれる。
 
 
そして、
忍者、侍、商人、
それぞれの生き様を通して、
人生とは何かと問いかけている。
そのことで一旦、
忍者が躍動する軽快なリズムから、
水を差されたような変調となるのだが、
それがまた、
読み進めるうちに、
人物への共感を強めてくれる。
 
 
やはり、司馬遼太郎は面白い。
 

梟の城 (新潮文庫)

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